令和5年3月30日
愛佳交通株式会社

特集『不思議な路線バス』
本日も、愛佳交通をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
さて、今回の特集は『不思議な路線バス』というタイトルで、愛佳交通に10台が在籍する、ある路線バス車両をご紹介します。いきさつなども複雑なため、その辺りも併せてご紹介させていただきたいと思います。




■日野ブルーリボンシティ
愛佳交通の各営業所に所属しています、日野ブルーリボンシティという車種。この車両は愛佳交通発足後、バリアフリー促進を目的に導入された。ただし、新造というわけではなく中古購入されたものである。最初に導入されたのは、朝倉営業所に配備された3台(車番:E11507〜E11509 日野ブルーリボンシティ日野KL-HU2PPEE 2000年製)のノンステップ車で、嘗ては相埼バスや東京中央自動車で活躍の後、親会社の東静高速鉄道(現 東静ホールディングス,静岡県沼津市)を介し、愛佳交通にやってきました。
配属された朝倉営業所は、市街地路線を抱えながらも、当時はバリアフリー化が他の営業所と比べて遅れており、今回ばかりは優先しての導入となった。導入された当初、この車両は他の営業所から羨望の眼差しで見られることとなった。それはそのスタイリッシュな前面形状やらいろいろ…旧愛佳中央交通からの引継ぎ車などで導入事例のあった、三菱ふそうニューエアロスターとはまた違う、使い勝手云々があったのだろう。沿線自治体からの補助などもあって、次々と増車されていく三菱ふそうニューエアロスター(ノンステップ)とは裏腹に、日野ブルーリボンシティは導入構想から外れていており、導入される見込みは無かった。
そんな中で中古導入された3台は、当時は少数派だったことも相まって、注目を浴びていたのであった…。

■20台の大量導入
そんな中で"20台の日野ブルーリボンシティが愛佳交通に導入される"という噂が、バス事業部の社員の間で流れました。要約は"東静高速鉄道が、九州の方で事業を停止したバス事業者と取引を行って、その子会社で使用されていたノンステップバス20台を購入するらしい"というもので、実際にこの時期(東静高速鉄道傘下)の東静バスには、高速乗合路線用のバスが10台、旧富賀交通より中古購入されており、話は現実味を帯びていたものと思われる。
やがて20台の中古ノンステップバスが、愛佳交通の整備工場へと運び込まれました。その出元は、廃業した小野冨賀交通(小野トミ交バス)。廃業に際して行われた車両整理の際、東静バスを介して愛佳交通に譲渡された。その車種は確かに日野ブルーリボンシティだったのですが、納入当初は似て非なる顔立ちだったようです。最初こそ、その状態のままで運用投入をするつもりだったが、整備工場の作業員は"整形工事"を決断。朝倉営業所で運用している既存車のうち1台を工場に持ち込み、改造対象車両の1台と比較し、調達する部品や改造箇所などを調査。他の車両の検査や修理のスケジュールの合間を縫う形で、徐々に仕立てるという話になった。
しかし、その際の計画書類や改造前の資料などは、整備工場での手違いやボヤ騒ぎによって消失してしまったため、今回の特集記事を記述するにあたって、改造時に携わっていた社員数人の記憶を頼りに画像資料を復元することとなった。


その20台のライト類には、日野自動車が嘗て製造・販売していた大型観光バス『セレガR』の部品が使用されており通称"セレガシティR"と呼ばれていたようだ。整形工事にあたっては、日野自動車よりブルーリボンシティの部品を取り寄せたり、設計図面のコピーを送付してもらうなどの協力を仰いだ。


△純正部品交換車 美海営業所配属E11106〜E11110及び、茜ヶ崎営業所配属E11206〜E11210に該当


しかし、その設計図面及び部品を使用して、元々のブルーリボンシティに復元したのは美海整備工場担当分の10台であり、朝倉整備工場が担当した10台は、別の車両の廃車発生部品を用いて改造された。これは、即急にノンステ車を欲しがった葉桜・花梨の両営業所の要請に応えたもので、故障頻発などで使用不可能と判断されて廃車処分となった三菱ふそうニューエアロスターの部品を再利用、他に必要となるパーツ類などは作業員及び地元鉄工場が協力の上で製作。改造が完了次第、申請書類などを整えて車検を通し、ナンバーを取得している。


△Nエアロ廃車部品交換車(1)花梨営業所配属 E11407〜E11411に該当


△Nエアロ廃車部品交換車(2)葉桜営業所配属 E11601〜E11605に該当

■これは"ブルーリボンシティ"じゃない。
バンパーなどの仕様が違うのは実質上の部品提供車となった三菱ふそうニューエアロスターの仕様違いによる。各仕様で5台ずつが改造され、それぞれ葉桜・花梨の両営業所に配備された。しかしながら、ブルーリボンシティが納車されると聞いていた両営業所では、仕上がって納車された後に賛否両論の声が上がったらしく、この仕様で納得した者もいれば、ニューエアロの顔を無理やりくっつけたやっつけ仕様と批判する者もいた。そんな人たちは"これはブルーリボンシティじゃない"と主張し、乗務することを避けた運転士もいたという。愛佳交通バス事業部の上層部からは"勝手に改造作業しやがって!!"と、上層部を無視して独断で改造したことを非難されてしまった。しかしながら、出来上がってみればそこまで違和感が無く、今まで古豪ばかりが活躍していた両営業所管轄の路線バス利用客からは歓迎された。
車両自体はブルーリボンシティなのに、前面形状は三菱ふそうニューエアロスターという、この10台のバスは、現在は社員や乗客の間で"シティーエアロ"という俗称で呼ばれている。

■改造しなくてもよかったんじゃないか??

この画像は、元小野富賀交通(小野トミ公バス)関係者だった方から、後日提供いただいた資料画像である。
愛佳交通に納入された当時は、恐らく会社名を消しただけで、カラーリングなどもそのままで納められたと思われる。ほぼ完全に"セレガシティR"という俗称で呼ばれたことが分かる外観であった。当時の記憶を頼りに作成された資料画像と比べて、明らかにかけ離れた外観だったことがお分かりいただけるだろうか。
この画像とを見比べた幾人かは"(記憶をもとに作成された画像)こっちの方がはるかにかっこいい"という感想が聞かれた。中には"この見た目だったら、改造しなくてもよかったんじゃないか??"という声まであった。実際のところ、画像作成に携わった人々に見比べてもらったところ"(小野富賀交通時代の画像)この見た目だったから改造をしたが、こっち(記憶をもとに作成された画像)で見た目がよかったら改造はしなかった"と感想を残している。
実際のところ、この20台の改造で多額の予算を使ってしまい、資金繰りが大変になったことがあった。うち10台…俗称"シティーエアロ"は手持ち部品を再利用して経費を多少は浮かせていたので、この10台も正規部品を用いて改造していれば、より大変だっただろうと記憶している。
そのようなことがあったのも、今では昔のこと…。改造によって生まれた、俗称"シティーエアロ"と呼ばれる10台のノンステップバスは現在でも地域の足として活躍を続けている。

筆者の紹介
名前:森村なぎさ(もりむら なぎさ)
出身:南牧県美海郡茜ヶ崎町
役職:本社広報課長
略歴
1993年:旧愛佳中央交通に事務系職員として入社
2007年:愛佳中央交通を退社。愛佳交通へ移籍。
2008年:自動車部広報課長就任。
2019年:本社広報課長就任。
*このページに記載してあることは、全て架空です*
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